やかんの歴史

日本では鎌倉時代にすでに登場しているが、元々は薬(漢方薬)を煮出すのに利用されていたため薬鑵(やっかん)と呼ばれていた。

鑵(くわん)とは、もともと水を汲む器という意味です。「やくくわん」から「やくわん」、「やかん」と変化したと思われる。漢字の「薬缶」は発音が「やかん」となってからの当て字である。

湯沸かしに使われた時代は明確なことは不明であるが、1603年『日葡辞書』に「今では湯を沸かす、ある種の深鍋の意で用いられている」とあり、中世末には既に湯を沸かす道具として用いられていたようである。また茶道でも用いられる鉄瓶(こちらは茶釜からの発展)のように鋳鉄でできた重い湯沸し用の道具もあった。

江戸時代の歌川広重「東海道五十三次」にもやかんが登場している。

歌川広重「東海道五十三次・袋井」

また古くは縄文時代には、やかんに非常によく似た形状の「注口土器」が存在している。火にかけたかは定かでないが、注ぎ口があり、取っ手の変わりに吊るし紐を通す穴がある。

注口土器(福島県三春町 柴原A遺跡) 文化遺産オンラインより

やかんの材質

あなたの家のやかんは何でできていますか?

やかんの材質を理解するとやかん選びにも一役買いますね。 今日はやかんの材質について見ていきましょう。

1) アルミニウム

軽くて丈夫、熱伝導に優れています。そのため柔らかく傷つきやすいです。製造面では量産しやすく、価格が安いものが多いです。スーパーやホームセンターで並んでいるのもアルミニウム製が多いですね。磁性がないため基本的に IH調理器は不可です。

マイヤー フジマル オピニオン2 ケトル 1.5L

2) アルマイト

アルミニウムの弱点をカバーするために表面に陽極酸化皮膜を作る加工処理をしています。腐食を抑えて傷つきづらくなります。歴史をたどると1929年に理化学研究所の植木栄が発明。それを引き継いだ宮田聡が「アルマイト」(登録商標)を命名しました。黄金色がとても美しい。これぞジャパニーズやかんです。

アカオアルミ湯沸5L

3) 琺瑯(ホーロー)

鉄、アルミなどの金属面にシリカ(二酸化ケイ素)を主成分とするガラス質を高温で焼き付けたもの。さびに強く、匂いが移りづらいです。反面、ガラス質なので衝撃や急な過熱、冷却に弱い。カラフルでお洒落なやかんが多いですね。

富士ホーロー ケトル solid SD-2.3K

4) ステンレス

クロムを13%以上含んだ鋼のこと。さびに強く、熱効率がよいです。なによりピカピカに光ってかっこいい!IH調理器にも対応しています。柳宗理さんのやかんもステンレス製です。いつかは手に入れたい一品ですね。

柳宗理 ステンレスケトル

5) 銅

熱伝導率 No1!すぐにお湯が沸きます。アルミ製が普及する前は、銅製のやかんが広く使用されていました。酸化により変色して黒くなりやすい。使い込むことで色合いが変わっていくのがまた趣があります。柔らかく傷つきやすいので取り扱いも丁寧にね。食品衛生法により食品に触れる部分はスズor銀メッキ処理がされています。

東屋 銅の薬缶

6) 鉄

古くから様々な道具に使われてきた鉄。加工しやすく、高温にも耐えます。他材質と比較して最も重いのが特徴です。鉄やかんはとても錆びやすいのでお手入れが大事です。使用後は蓋を開けて、弱火で水分を飛ばしましょう。一方で、鉄やかんは鉄分が水に溶け込むため鉄分補給にぴったりです。水道水の塩素分(カルキ)を消す効果もあります。岩手県の南部鉄器が有名ですね。これも立派なやかんです。

南部鉄器

やかんの形状

やかんの形は機能性、デザイン性に富みさまざまな形をしています。個性豊かなやかん達を眺めていると楽しいものである。代表的な形状をご紹介します。

1) だるま型

誰もが愛着を感じる人気者です。古きよき日本を思いおこさせる。子供のころ、冬になると教室の真ん中でストーブにやかんが鎮座していました。東北大震災の後、避難先になった体育館ではストーブにやかんが凍える人々を温めました。ちなみに「やかん刻印」もこのだるま型に付いていることが多いです。

ホクセイ 1.5L

2) 円筒型

彼がいることでエレガントな空気をかもし出します。朝食時に紅茶を入れるとブリリアントなひと時を味わえそう。ケトルと呼ぶほうが似合っているかもしれない。

野田琺瑯 ポトル

3) おわん型

おわんをひっくり返した形です。最近ではホームセンターでよく見かける量産品にも多い形状ですね。曲線のラインは優しさとぬくもりを感じさせてくれます。個人的に憧れのピコー K3もこの形状です。

フィスラー ベルリン

4) 三角型

どこから見ても三角です。まず見た目がかっこいい!でも容量が少ないことが多いです。モダンな感じとオシャレ度ではNo1か?近代的なデザインと安定感を備えた一品ですね。

ALESSI アレッシィ バードケトル ブルー 9093

5) カーリング型

「そだねー」で一世風靡したカー娘たちのカーリング。その投げる石(ストーン)に似ている。と勝手に思っている。底面も広く、どんな状況下でも安定して投げれそう(笑)いつの日かヤカーリングをこのやかんでやってみたい!

野田琺瑯 アムケトル

やかんの定義

ひとえに「やかん」と言っても、材質、形、大きさと多種多様な種類を思い起こさせる。

「南部鉄器はやかんですか?」 とよく聞かれることがある。

諸説あるが、私が考える「やかん」の定義は、

 1 取手がある

 2 注ぎ口がある

 3 火にかけて使用する (IHコンロ使用も可)

材質については上記が満たされていれば問わない。

だから、南部鉄器に代表される「鉄瓶」も

私にとっては「やかん」なのです。